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1969年〜1973年までの911用メカニカル・インジェクションについて、
インジェクションポンプがセットされているからと言って安心するべからず !!

他モデルのメカ・ポンと取替えられているかも


    エンジンの上にメカ・ポンが固定されているからと言って、それが正規のポンプであるとは限らない!

 中古車で購入した車に正規部品が使われていると過信して良いものだろうか?

 近年のオイル粘度はマルチグレードになってからシャビシャビ感が強く、メカニカル・インジェクション・ポンプで駆動される 911シリーズには厄介な話である。

 あるお客さんと一緒に体験した実話なので参考までに紹介したい。私の所へ立ち寄ったそのお客さんは、たった今その車を購入して来たばかりであると言った。クルマは、1972年 911Sである。オイルレベルの見方を知らないので教えて欲しいと言われて、オイルフィラーキャップを外した。
 ご存知のとおり72モデルは、右リヤフェンダーにオイルフィラーがあり、エンジンフードを開けなくてもオイル量がチェック出来る。

 どのメカ・ポン搭載車も同様にキャップを外した時にはガソリン臭がするが、そのクルマはちょっと様子が違ってガソリン臭が強く、リヤフェンダーの外側までオイル飛沫が飛び散ると言う表現が適していた。オイル量を測るよりも前にサラダ油の様な粘度だったので、不安を感じてショップへ返品する事を勧めたのである。エンジンオイルの中へガソリンがかなり混入している様に思われ、その日は他の事情も有り、購入したショップへ車を返してチェックすることになった。

 1カ月後に再び、そのお客さんは別の車に取り替えて貰った旨と、購入したショップの対応の説明を受けたのであるが話を聞いて驚いた。

 ガソリンがオイルへ混入する疑いのある72年の911Sからメカ・ポンを降ろして、倉庫に転がっていた72/73年 911T用のメカ・ポンと載せ変えて「今度は調子良いですよ」と平然と言い切ったそうである。それがポルシェの専門店である様な広告宣伝をしているショップの対応なのだ。

 ナロー911好きなオーナーでも、ほとんどの人が自分の車に載っているメカ・ポンを疑う事がないと思うが、事実は疑う事が必要だと思う。
 

これはBOSCH発行のメカニカル・インジェクション・マニュアルに掲載のメカ・ポン型式一覧である。


以下の画像は、その型式表示とポンプ外観である。細部を見比べてチェックして貰いたい。

 1969年 911S前期用ポンプ



 1969年 911S用ポンプ



 1970/1971年 911S用ポンプ



 1972/1973年 911S用ポンプ



 1973年 911カレラRS用ポンプ


 「知らなければ幸せ」と言う事もある。それは中古車を購入し911オーナーになった時の喜びのまま過す事が出来たら至福なのだから。

 しかし、それでそのまま『 911のパフォーマンスって、こんなもの』と断定して貰っては困る。磨耗する箇所は全て磨耗して疲労し劣化し切っているし、他人が所有していた間にサボっていたメンテナンスのツケが残っているからである。
 「昔、ナロー911を所有していた」と車遍歴を自慢する自称カーマニアを名乗る人が居るが、まるで新車に乗って居た様な自慢をしても、スグに手放して他車に乗り換えるほどコンディションの悪い車だったと、自慢話を聞きながら私はイメージする。

 大枚をつぎ込みレストアしたと豪語する人も居る。しかし、現実に車を見た時に磨耗したままの部品がしっかり残っている。一般的に「レストア」と言う言葉を軽く口にする人が多いが、エンジンとミッションのオーバーホール、ボディの修復や汚れを取除いただけであり、メカニズムの隅々の磨耗した部品に至るまで全て手を入れて性能回復にベストを尽くした車を見た事が無い。
 全て業者に騙されて依頼した時点のレベルより多少良い状態になって満足させられてしまっている。老体にムチ打ったところで可哀想なだけであるが、オーナーとして所有するのなら一度は新車時の性能に近づけて走らせる方向で考えて欲しいモノである。

 その基本になるものが、新車の時にセットされた部品が必要であると言う事である。911Sのエンジンを駆動するのが911T/911Eのメカ・ポンでは論外であるのだ。ましてやウェーバーキャブでは性能回帰は有り得ない。

 このコーナーの文章に目が留まったなら、まずエンジンフードを開けて、エンジン型式、メカ・ポン型式のチェックから始めて欲しい。それが済んでも手放しで喜ぶには早過ぎる。過去に整備したショップが信頼できる人物だとは限らない。技術不足を棚に上げ適当な修理をしているケースも多々あるのだ。

 個人レベルでは、エンジンをオーバーホールしても、エンジン調整したとしてもカタログスペックの出力が発揮されているか? 否か? を確認する事は不可能である。
 昔、ちょっとだけ付き合った関西在住のレースメカニックがいた。その人物曰く、73カレラRSのメカ・ポンの調整の為に毎晩、阪神高速を1週間走っても満足な結果が出せなかったと言った。

 私の69年 911Sを1985年頃、ミツワ自動車販売・名古屋支店へ車検に出した時、丸一日エンジンを回しっぱなしにしてエンジン調整し、何とか納車できる様にしたと聞いた。ガソリンタンクを満タンにして入庫した車が、納車時に空っぽになって居た。
 簡単に調子が出せる代物では無いらしいが、いずれにしても、行き付けのショップの技術の押し売りに対して代価を払っているのである。ナロー911を看板代わりに置いてあるショップが、必ずしも専門医では無い事を覚えておいて欲しい。

 騙されたまま気付かない現実なら『知らなければ幸せ』と言う事もあるが、新車時の性能回帰の為に必要な部品が揃っている事を確認して欲しい。性能回帰計画は、その次のステップである。

 

July 30, 2013



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