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1965年〜1973年 ポルシェ 911/912用

純正ノーマルシートのリペア パート T

『運転席と助手席』 座り比べた事が有るだろうか? 
運転席は確実に劣化している!!


 1960年代に設計された座席の為、近年製造された車の座席と比較するのは愚かな事であるが、現代の車に比べれば「かなり軟らかい」、そして、車が段差を乗越えた後の「揺れがなかなか収束されない」等、欠点も多い。しかし、一つ評価すべき突出した点に「地球に優しい」と言える天然素材を多用している。

 座席を構成する素材は、鉄 (ベースになる受け皿、バネ、リクライナー、ネジ類等) 、塩ビ (ビニールレザー等) 、天然素材 (椰子の植物繊維を固めたクッション、麻で編んだ布、フエルト等) 、合成ゴム (背中に当る部分の弾力材) 牛革 (本革シートの表皮) が使われており、焼却処分しても有害物質を発生する素材が少ない。

 素材だけを言えば、現代の規格で『難燃性』が要求され、車両火災対応の素材しか使用出来ないと聞いた。

 この地球に優しい座席を新車当時のスペックに近づけるには、近年の自動車用座席に使われている素材では難しく、街中の自動車内装業者へ気軽に補修依頼してしまって、逆に「やらなければ良かった」と言う結果を招いたリフレッシュが多く存在する。
 表面上のリフレッシュが出来たとしても、結果的に性能が悪くされてしまうのである。

 ココにも安全基準が関係するが、1965年〜1973年に拘った場合の雰囲気復元が難しくなってきた。


     まず、ナロー911のみならず旧車オーナーに問いたい。

「自分の愛車のステアリングと運転席シートに、どれだけ理解を示しているだろうか?」

 中古のシートを見て判断する際、表皮のシートカバーに破れが無いと、それだけでコンディションに好感を持ち、本来の座り心地を左右する硬さ、ホールド感の事など深く考えない人が多い。
 全ての自動車に言えるのは、製造された時から経年劣化が生じており、基本的な性能低下が避けられない事である。

 車を走らせる時に必ず酷使される部品、それが『ステアリングホイールとドライバーズシート』である。

 シートカバー表皮が破れても座布団を置いて誤魔化していた人も居た。エンジン/足回りに金をかけて、そんな子供騙しは情けないが、駆動系と比較すると、明らかに軽く見られているようだ。

 残念な事に、新車当時の座席形状を維持している車は少ない。シートカバーを張り替えても、新車時の形状に戻してくれるショップは少ない。さらに、新車時の座席の硬さに拘って復元してくれるショップは無く、オーナーが依頼しなければ過度の補修に着手する事も無い。

 

   これが新車当時の座席形状である。

上 : 『1967モデル ポルシェ 911S』 カタログより抜粋

下 : 『1970モデル ポルシェ 911』 カタログより抜粋


    アメリカ国内で縫製した1972/1973年モデル 911用シートカバーでリフレッシュしたノーマルシート

クロームメッキ製リクライナーはノンオリジナル

 この座席には、1972/1973年モデルに使用されたエレファント・ハイド・ビニールに近似したドイツ製ビニールを使用。

 座面部には、椰子繊維を固めたクッションの収縮変形と型崩れを、椰子繊維製フェルトで補強補修し、太もも両側のホールド感を上げました。全体的に座り心地を硬くする補強を施した結果、補修前のフィーリングと全く別物になりました。

 背面部の脇腹両サイドには、経年劣化し両側へ潰れて逃げた椰子繊維を元の位置まで戻す為の補正処置をした結果、脇腹部のサポートもしっかり復元されホールド感もかなり上がりました。

 ココまでの処置を施すと、経年劣化したポルシェ純正スポーツシートに魅力を感じないほどのホールド性能が得られます。

 このご時世におけるリフレッシュでの弱点を挙げれば、シートカバーを縫製するにあたって、当時のレカロが選び採用したビニールレザーと比べると、厚さ、伸縮性共に当時、レカロは、1.4o厚のビニールレザーを使った。しかし、現代では同等のビニールレザーが入手出来ない事である。近年は1.1o厚が一般的で、時の流れによって変わってしまった為にボリューム感や醸し出す風合いが劣ってしまうのである。

 この風合いについて触れると、例えば軽自動車に使われているビニールレザーと、高級車に使われているビニールレザーが、全く同じ物を使用する事は有り得ない。高級車に使われる素材を、軽自動車に使ったら高級感が失われてしまう。
 素材一つから軽自動車と高級車の差別化が必要だからである。

 近年のシートカバー縫製で使用する素材にも簡素化が図られ、当時と取巻く環境に制約が生まれる。当時と比較すると結果的にカタログ掲載の座席画像と同じレベルまで形状再現する事が難しくなった。
 それは、当時使われた天然素材の入手が今では難しくなり、容易に入手できるウレタンスポンジ多用によって、弾力性が大きく変わってしまう。
 シートカバーを新しく縫製して、その下へウレタンスポンジで成形したクッションを使えば、シートカバーを張り替えた直後はパンパンに張って、見た目の印象は立派に仕上がった様に見える。しかし、座り心地は旧態依然で何も変わらない。シート全体のクッション弾力復元は、何一つ施されないのである。

 それらの表面上のリフレッシュだけで誤魔化されてしまうオーナーが多く存在する。まさに、安物買いの銭失いになる。

 シートを張り替える職人さんで、良心的な人であれば、運転席と助手席のシートクッションを入替えて組み上げてくれる場合も有る。

つづく  

この後のシート補修行程に興味を抱いた方は、電話にてお問合せ下さい。  


Nov. 17, 2012
一部追記 Dec. 11, 2014

一部更新 April 12, 2017

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