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過去にはこんな 『ポルシェ純正マニュアル』 も存在した。
興味本位で入手したポルシェ 911シリーズのマニュアルの中には、競技車両用のマニュアルとパーツリストが存在していた。数多く出回っておらず、非常にレア物資料となってしまった。
私が入手したのは、2.2リッター・レーシングのスペックに興味があり、米国内で色々と探して貰っていた時に、偶然に運が良かったと言えるのだが、残念な事にドイツ語版だった。
画像・・・左、1974モデル 911 カレラRS 3.0用マニュアル 右、1970モデル 911S
2.2リッター・レーシング用マニュアル
カレラ RS 3.0 インフォメーション
画像 左、カレラ RS 3.0 ストリート用 パーツリスト 右、カレラ RS 3.0
コンペティション用 パーツリスト
1969年モデル 911に見る登録書類考
現代と比較すれば、一番大きな違いは「\=$の為替が、1ドル360円の固定レート」だった事である。当時のポルシェ911Sの価格は、アメリカ合衆国で9000ドルだった。日本国内では、1969年の911Sが550万円だった。
当時、トヨタ2000GTが238万円、スカイライン2000GT-Rが150万円と言うことで、その時代の国産車と比較すれば、とても手が届くような車ではなかった。
ミツワ自動車の記録によれば、1969年モデルの911Sは全国で26台の登録が確認された。
当時、どの様な登録がされたのか知る由も無いが、その場しのぎの対応だった様に思われるのである。60年代に正規輸入され登録した911には、車検証の数だけ記載内容が存在するかも知れない。
この時代の911/912には、助手席側のドアミラーは存在しない。運転席側の平面ミラーのみであり、助手席側の凸面ミラーが部品として登場したのは1972年モデルになってからである。
道路交通法には、後方確認の為のミラーは左右のドア、フェンダーに義務付けられているが、当時の911/912を登録する時には必要ではなかったらしい。
運輸省の型式認定時に国へ提出した書類と画像の中に、左ハンドル車の右ドアにドアミラーが取り付けられていたら車検時に助手席側ドアミラーが必要となる、と聞いた事があった。実際には、インテリアミラーで、必要な後方視界が確保されていると言うことだそうだ。
新車から8年間を異国で過して、日本へ渡って来た中古並行輸入車
:現在は部品取りの車と化してしまった1969年モデルの911Sである
1969年7月、ドイツを旅立ち、日本のミツワ自動車へデリバリーされたと本国に記録あり、同年9月に登録された
新車を登録した際には車名欄にはポルシェと記載されず、ハイフン『 - 』が印字されたのみである。
名無しのまま車検を継続、6年後の昭和50年12月に更正登録、晴れて「ポルシェ」の文字が車検証に載った。
車名無し、エンジン型式不明の車、一体どんな呼称だったのか? 実に不思議な1969年モデルの911Sである。
ポルシェA.G.保管のデータによる、車の製造作業記録である。
1969 911Sクーペ 車体番号 1193005〇〇
エンジン型式 901/10 エンジン番号 6390880
トランスミッション型式 901/13 ミッション番号7193585
ボディカラー/ペイントコード ライトアイボリー 6804
インテリア・マテリアル ブラック・レザレッテ
ぺピタ・クロスドチェック 9842
タイヤ ミシュラン
オプション ティンテド・グラス
ハロゲンヘッドライト
1976年以前の911モデルは、日本国内での登録時にエンジン型式が『9116』と印字されている場合が多い。
911の6気筒と言う読み替えだそうだ。
May.12, 2014
ホーングリル考
ナロー911のフロントマスクの特徴として言える部品として、トランクフードとターンシグナル・ユニットとの間にホーングリルが存在する。
1965年〜1968年の911シリーズには、ホーングリルの後ろ側に、しっかりとホーンが左右に取り付けられていたのであるが、1969年以降の911シリーズには、左右のフロント・フェンダーの内側へバッテリー・ボックスが張り出した事により、ホーングリルと言う名称と言うのであるが、ホーンはバッテリーボックスの下方へ追いやられてしまい、実質的にホーンの音はホーングリルから流れる事は無くなった。
ホーングリルの形状は、外観的に大別すると1965年〜1968年の縦横比の扁平タイプ、1969年〜1973年のタイプに分かれる。
1965年の911/912は、4本ネジで固定するタイプで、1967年の911から2本のタイプに変更された。1967年の912カルマンボディには一部4本止めグリルが使われている。どちらのタイプも軽合金製でクロームメッキ仕上げである。
1969年〜ターンシグナル・ユニットの天地が少し大きくなった関係から、ホーングリルの形状も天地が伸ばされたタイプになり、2本ネジで固定されているが、1968年以前の形状と全く別物と言う感じである。
1969年〜1971年までが軽合金製でクロームメッキ仕上げである。1972年は、1969年〜1971年のホーングリルと外観的に変わらないが、樹脂製にクロームメッキへ変更された。1973年は、ターンシグナル・レンズの縁取りがブラック仕上げへ変更された折に、黒色の樹脂製へ変更された。
1969年〜1971年 911/912用ホーングリル、金属製と言う事もあり1個辺り約300gの重量である
1972年911用ホーングリル、プラスチック製で明らかに軽量化されたと言える
上記のホーングリルは、比較するに最適なので、どちらもクロームメッキ仕上げの物を使用した。しかし、表面の形はほとんど変更が無いので有るが、裏面には金属製とプラスチック製では少し異なる。表面の金型は変更せずに、裏面の金型だけ変更した様にも見える。
この重量差は、かなり大きいと言えるが、私感として考えると、テールヘビーのクルマの前後バランスを考えたら、約500gテール側へ重心位置を変更した感がある。ドライバーより前の重量より、ドライバーの後方で軽量化すべきだと思う。
1972年モデルだけについて言えば、エンジンオイルのタンクをリヤタイヤの前へ移動しているので、必ずしも他の年式と比べるとテールヘビーではなくなっている。車重の前後配分については年式ごとの前後バランスについて公表されていないので不明であるが、例えばナロー911の中で911Sを比較すれば、67年から各年式の911Sは全て重心位置が微妙に変わっており、全てのモデルで乗り味が違うのであろう。
新車時のコンディションで、各年式ごと7モデルを乗り比べてみたいモノである。
ホーングリルの部品入手について
現在、ポルシェ純正部品としてディーラーにて購入できるホーングリルは、全てU.S.A.で市販されているレプリカ・ホーングリルである。U.S.A.の市販品と同一の物を入手して、ポルシェの部品ラベルを貼り付けて純正部品として供給されるのである。
品質的にはかなりのレベルの高い製品であるが、根本的に欠陥がある。
その欠陥とは、三次元の成形が狂っており、トランクフードの曲線に合せて取り付けるとターンシグナル・レンズのラインと繋がらずボディラインを損ねてしまう。それをボディショップで誤魔化す努力をして取り付けると、トランクフードとフロントフェンダーのチリ合わせの巾とホーングリルのラインに違和感を生じてしまう。
その部分を妥協してレプリカ部品を取り付けるのであれば、それはオーナーの考え方一つであるが、可能なら、再メッキをしなくても良いコンディションの中古品を取り付けるのが、車にとって幸せな方法であると信じる。
巷間では、簡単に再メッキすれば良いと言われるが、再メッキして新車当時の耀きが戻る事は無い。クロームメッキの平面に自分の顔がクッキリと反射するようなメッキに仕上がる事は皆無である。たとえキズが付着していても新車時のメッキ層が一番美しいのだ。
私はまだ自分で確認していないが、近年では、真空蒸着メッキや塗装メッキと言う従来の電気メッキと違った加工方法が有るので、ホーングリル等の再メッキに適した技法が見つかるかも知れない。あとの問題としては、当時のメッキの色調と似たメッキが出来るか? 否か? である。
1972年911用 プラスチック製ホーングリル、未使用・新品
当時物メッキ製品の輝きは「素晴らしい」の一語に尽きる
Dec. 4, 2013
プロダクション・プレート考
ナロー911のトランクフードを開けて、まず最初に眼に飛び込んで来るシンボル的存在のプロダクション・プレートである。
この部品は、正式にはパーツリストへの記載されず、偽造防止当のセキュリティに関係して一般に販売されない部品の一つである。各年式、グレードの種別を表すものとして、一般ユーザーにはあまり関係のない存在かもしれない。
1980年頃の日本では、ポルシェ911はクルマ好きの間でも「高嶺の花」であった。1980年代半ばには、1973年911カレラRSを筆頭に、大事故を起して潰れた事故車を再生復元して販売する業者が存在したと言う話を聞いた。
その再生方法には、フロント部が大きく潰れた車と、追突されてテールが潰れたクルマを準備して、中央で繋ぎ1台にするニコイチ再生を受けたクルマが中古車として流通すると言うもので、明らかに不法修理である。
また、当時の取得税、自動車税が高額な背景から、オーナー名義のクルマが事故で潰れた場合、他の中古車へ車体番号等を移植して作られた偽装車の話も聞いた。この場合には、別途用意する車が盗難車と言うケースも考えられるのである。
高嶺の花、高額なスポーツカーと言う存在が、色んな非合法の手段による疑惑も多々存在したと思われる。
私の拘りの一つ、新車を購入出来なかったオーナーが、中古車を入手してレストアした場合の『最後の砦』として、このプレートの存在がある。新車の耀きを取り戻す事が出来ても、プロダクション・プレートの表面には経年劣化を防止する表面処理がされておらず、酸化して黒ずんでしまったクルマを見掛けることもあった。それが簡単に入手出来なかったプロダクションプレートの存在である。
ココに取り上げたプレートは、1965年のOシリーズから1969年のBシリーズまで使われた部品番号901から始まるナンバーで管理されたプロダクション・プレートである。(このプレートは912は該当しないので除外する。)
1965/1966年モデルの911には130ps1種である。1967年モデルには130psの911、160psの911Sが存在するが、全てが通し番号の為に911が何台、911Sが何台製造されたのか? 詳細不明である。(67年の911Sクーペは、一説には400台余と言う話もある。)
その生産台数の関係から1種類のプレートへ手を加える形で対応したものと推測できる。
ココに記載したプレートが現存しない理由は不明であるが、「911」のプレスが加工されたものは入手困難のレア物部品である。その為にプレミア付きの価格で取り扱われている様である。
上記画像は、1964年から製造された ポルシェ911用プロダクション・プレート
当時物・純正部品、Oシリーズ用 65年〜67年 130ps
赤い丸印部へ追加工することにより、他モデルへも流用された
画像上段 : Oシリーズ用プロダクション・プレート
画像中段/下段 : Bシリーズ 911S用に『S』の文字を裏面からプレスにて浮き出し加工
『S』の文字だけを手作業にて、1台、1台加工したことが文字の間隔にて判る
1970年のCシリーズよりプロダクション・プレートを変更
この場合でも、T/E/Sの文字を1文字ずつ加工
Aug. 21, 2013
インターネットの普及は、とても便利な世の中を作り出してくれたと痛感するこの頃である。お客様と電話で話しながら、言葉で表現し難い説明を画像化してメール送信する事により、通話中の話が途切れる事無く瞬時に相手の手元に届けることが可能になった。
昔なら写真や図面を郵送し、郵便物が配達されるまで全く打合せが出来なかった。1980年代後半にFAXと言う通信手段が普及し始めて、その待ち時間が短縮され、1990年代末にインターネットが庶民的になりつつあっても、インターネット接続料がまだまだ庶民化の障害になっていた。
今、その経緯を振返れば、私がパソコンを購入してインターネットへ接続した頃にはホームページを開設する個人や企業が少なく、正しい情報/知識が掲載されていた。
しかし昨今では、正しい情報と曖昧な知識・誤情報が混在して、特に個人が解説する一見マニアックなホームページには誤情報が、管理者が間違った知識に気付く事無く記載されている事が多くなって、いささか残念な気がする。
まあ、趣味の分野である関係から、個人の間違った知識まで言及すべきではないのかも知れない。言わば「お節介な」ページである。
ポルシェ社のモデル表現によれば、僅かに製造販売された1964年 901を除き、1964年9月〜1967年7月まで生産のOシリーズ、1967年8月〜1968年7月がAシリーズと分類される。
この年式まで、420Φサイズ径のステアリング・ホイールが標準装備され、見た目が細くて大きなステアリングと言う印象が強い。
この間の420Φ4本スポーク・ステアリングは、ウッドリム、プラスチックリム(エボナイト製)、レザーリムの3種類に大別され、初期のウッドリム・ステアリングには、スポーク部の金属にアルミ材が使われた。
1960年前後の英国車、イタリア車などには、アルミスポークにウッドリムを加工したステアリングを装備したスポーツカーが多く存在し、アルミ材/木材と言うコンビネーションが流行した。
当時の有名ブランドであるレスレストン、ナルディなどのステアリングは、この2種類の素材を上手く加工して豪華に高級感を醸し出していたが、アルミ/ジュラルミン板の強度まで考慮しなかった為に、アルミスポークに力を加えるとアルミ板が変形歪みを起こし、接着された木材が変形に耐える事が出来ずに分離/分解して短命に終った。
レスレストン、ナルディのウッドステアリングには、ウッド製グリップにアルミ製リベットをステアリングの表裏を貫通させて固定したステアリング・ホイールが販売されたが、接着剤だけよりも少しはマシと言うレベルであった。
1965年の911にも、英国車、イタリア車同様アルミスポーク/ウッドリムのステアリングが標準装備されたが、全体的な強度的に弱く少し強めに力を加えると「ミシ、ミシ」と悲痛な音を発て、破壊の予兆を知らせた。
グリップ部を形成するリムの内側へ、一周するリング状にアルミ材の金属地肌が見える構造の為、レスレストン、ナルディ製のステアリング同様の豪華さにはケチを付けられない仕上がりであるが、アルミ板の上下へ木材を接着しただけなので、接着剤強度だけが頼りと言う強度的に不安な製法だった。
その関係から木部の接着が剥がれて板を曲げ重ねて整形された断片がバラバラになってしまい、ステアリングとして現存する物がごく稀になった。
蛇足な忠告では有るが、アルミ・スポークにウッドリムのステアリングは、近年の交通事情を考慮し、自らの身の安全を確保する為には、取り付けて使用すべきではない。
911用のウッドステアリングは、正確な製造変更時期が不明だが、その後、スポーク部はアルミ材から鉄材に変更され、リムの木材の内部には10o位の太さの鉄芯がスポークに溶接され、強度的には比較にならない剛性を持つステアリング・ホイールに変わった。
912には、エボナイト製のグリップを持つステアリングが標準装備であったが、素材が悪いのか? 樹脂表面が簡単に傷付き磨耗も激しくステアリング裏面の凸部が磨耗した物しか現存しない。
1967年になって911Sが発売された折に、革巻きステアリングが登場した。硬質ゴムで成形されたグリップへ、牛皮革を縫製したリムのため触感は僅かに軟らかく仕上がっており、よりスポーティなステアリングと言う印象が強くなった。
1968年の資料によれば、911/912のエボナイト製ステアリングに対して、60ドルの追加料金を支払えば、オプション設定されたウッドリム、レザーリムへ変更できた。また、30ドルの追加で30oレイズアップしたステアリングをオーダーする事も可能であった。
この30oレイズアップは、ボスとステアリングの間へ30o厚の樹脂製スペーサーを挟みリベット止めしており、経年劣化を考えると耐久性/安全性に過信禁物と言える部品である。
上段2個 : 純正オリジナルホーンボタン 下段2個に関してはノンオリジナル
1965〜1968年 911/912用純正オリジナルに準じてリビルトしたホーンボタン
ポルシェと言うメーカーは、顧客の好みに応じて「何でも有り」的なチョイスに対応してくれるので、とんでもない車に信じられない装備がされている場合が多い。1968年モデルに関して、911/912、911L用のオプションとして100余に及ぶライン・オプションが指定できる事になっていた。
日本人の感覚から言えば、基準はトヨタ車、ニッサン車のカタログに準じた考え方の人が多いので、年式違いの部品が装備されていたりすれば『ノンオリジナル』と品評される事がある。
ポルシェは、顧客満足度優先であり、オーダーすれば叶えてくれると言う姿勢は、356時代から911/912のプロダクションデータを調べた時にも新車記録に残っていた。
1969年のBシリーズから 1973年のFシリーズまで、各年式による細部の変更は有るものの、1973年カレラRSを除きステアリングホイールに大きな変更点は無く、911/912用としては400Φ4本スポークステアリングが装備され、エボナイト製、ハードラバー製、本革巻きの3種類が存在した。
73年カレラRSの場合には、914-6用の380Φステアリングが流用された。
ステアリングシャフトのセレーションが同一サイズの為、ナロー911/912、914全車、ワーゲンビートルにも取り付けが可能な為、380Φサイズの914用ステアリングは、カレラRS用ステアリングと謳われて高値で売り付けられる場合が多い。
取り付けてしまえば素性を隠す事が出来るので特に問題は無いが、914-6用ステアリングは、ボス部に打刻された914.347.803.10のエボナイト製、914.347.806.10の革巻きステアリングの2種類しか存在しない。
他の914.347.・・・と、始まる部品番号のステアリングは、約10種類存在するが、全て914シリーズの4気筒用である。
左 : カレラRS用ホーンパッド 右 : 911/912用ホーンパッド
左 : カレラRS用ホーンパッド 右 : 911/912用ホーンパッド
カレラRS用樹脂製ホーンパッド・・・同じ金型へ樹脂を流し込んで成形した部品
軽量化の為に樹脂を使った関係で、強度不足から折損破壊して現存部品が少ない
1969年〜1973年 911/912用金属製ホーンパッド
Dec. 25, 2012